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旅のエッセイスト保谷早優玲・旅と翼

旅のエッセイスト・旅行作家・トラベルライター・旅游記者である保谷早優玲が旅と飛行機愛とときどき美食について語ります。

ほんとうに頼れる器を探す旅/砥部焼・松山

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何の気なしに手にしたものが、頼れる器になることも

松山空港からどれほど車を走らせただろう。

 気づけば道路の中央分離帯に大きな鉢や壺が並び、あちこちに「砥部焼」の文字がある。そうか、ここが愛媛出身の友人が言っていたあの砥部焼の里なのか。陶芸館という大きな看板についレンタカーを停めて店に足を踏み入れると、大小さまざまな砥部焼がざっくりと積まれていた。「太めの藍色で大胆に描いた砥部焼を、国内のいろんなうどん店で見るはずだ」と友人が言ってた意味がようやくのみこめた。

 ぽってりと厚手の陶器に、唐草のような模様が薄い藍色で描かれている。この絵具は呉須(ごす)といって、手書きの唐草模様が多い。何かと丈夫なので、うどん屋のどんぶりなどに使われることが多いという。

 そこで出会ったのは小皿だった。お醤油か香の物でも入れようと思って何の気なしに買ったのだが、これがとても使い心地がいい。何となくだが欧米ブランドのDANSKみたいな雰囲気で、北欧食器が多い我が家にしっくりとなじんでいる。

 たまたま車を停め、たまたま手に取ったものを買っただけなのにこんなに使い勝手がいいのなら、その奥にある砥部焼の里に行けばもっとたくさんの運命の出会いがあるのではないか、という想いがずっと頭から離れなかった。

 それで、もう一度この砥部へ来たのだ。

 やわらかく、日々の暮らしになじむ色とかたち

 実は別のところを目指してナビをセットしていた。しかしこのカーナビがややのんきなところがあり、到着地がおおまかなのだ。そして五本松という看板を見て勝手に勘違いしたのが、この陶彩窯、長戸製陶所だった。

 お店に入ってから、あ、ここではないと気付いたのだが、いやもうここ1軒で十分素晴らしいのではないかと思う程に、並んでいる陶器が私好みだった。フォルムを大切に、軽くて薄く丈夫な新しい砥部焼きをコンセプトにしているからか、ぽってりとしたあの砥部焼のイメージとはまた違うが、それでいて繊細すぎることがなく、そう、あえて言えば優美。

 私は今回、蕎麦猪口を探しに来たのだが、陶彩窯でその候補のかなり上位にきそうな器を見つけた。アイボリーの地に、まっ白な釉薬でアイシングクッキーのような模様をつけている。手になじむ感じもいいし、模様が雪のようだ。それを使ってそばをたぐる自分の姿まで想像できた。

よし、買おう。

並んでいたものがどれ一つとして同じ柄がなかったので、同じシリーズで蕎麦猪口をいくつか買ってもよかったのだが、まだまだ運命の出会いがあるかもしれないと思い、ひとつにとどめておいた。値段は確か1,800円ほど。

 

これでコーヒーを飲んでもしっくりくるし、意外にビールなんかも行けるんじゃないかな?止まらない期待を胸に秘め、レンタカーに乗り込んだ。

 

 <DATA>

陶彩窯 長戸製陶所

住所:愛媛県伊予郡砥部町五本松196

アクセス:砥部焼伝統産業会館より徒歩で約10分・車で約2分(駐車場5台可)

TEL:089-962-2123

営業時間:9:00~18:00(不定休)

 

白と青のくらわんか碗

松山市のとあるセレクトショップに、素敵な砥部焼が置いてあるという知人からのSNSを頼りに行ってみた。

お目当ては白青というブランドである。

 

スタンダードな砥部焼はどことなく伝統工芸品という雰囲気が拭えない。しかしこの白青というシリーズは、作品としての砥部焼と、製品(プロダクト)としての砥部焼を考えていくというコンセプトのもとにつくられたシリーズだ。

 

潔いほど青く

潔いほど白い。

 

本当に

ただそれだけ。それがまたよかった。

 

くらわんか碗、というのを初めて知った。

江戸時代の庶民の器で、ご飯茶碗にしても酒を注いでもよいものだったとか。白青では、そのくらわんか碗を作っている。高台ががっしりとしているから、安定している。汁物を入れても揺らがぬ足元が心強い。色出しにこだわったであろう藍色の具合も素晴らしかった。墨はじきという手法で作られた、梅の模様を散らしたのにも心惹かれたが、まずはスタンダードに青一色のものを迎えることにした。

 

同じシリーズでグラデーションの移ろいが美しい蕎麦猪口もなかなかよかった。しかし今回は青いくらわんか碗に運命を感じてしまった。これに土佐醤油をかけて食べる卵かけご飯はさぞかし格別だろう。

 

縞柄(太)女性サイズは1800円(税別)。梅を散らしたものは同じサイズで4,600円(税別)。水を打ったような平皿の美しさは必見だ。

 

<DATA>

白青

www.shiroao.jp

唇に当てる器こそ、日々続く物語をつくるものだから

器は、直接唇にあたるもの。体の中に取り入れる食べ物をのせる器だからこそ、愛おしいものを使いたいと思う。砥部焼とわたしとの暮らしはこれからも続いていくだろう。

 

さあ、つぎはいつ松山に出かけようか。